1.命題証明集

神と矛盾。

A:「神は、矛盾を解決できるだろうか」

まず、この主張については、

B:「神を試みてはならない」

ということを明記した上で考えていくことにする。

命題Aの言うところは、

C:「“絶対に貫く矛と、絶対に通らない盾”を神は作ることができるか」

ということであろう。

ここでの要点は、

D:「絶対とは唯一性に基づく」

ことである。

そもそも、

C2:「矛と盾に対して、“絶対性”の可能性を考える時点で、神の権能を認めている」

なぜなら、

C2*:「絶対性を持つ何かの“創造”は、絶対者を前提にしなくては成立しない」

からである。

つまり、

A*:「“神が矛盾を解決できるか”の議論は、神の絶対性を前提としなければ不可能である」

のだ。

命題Dが言える理由は、

D*:「絶対的な力は、その行使が最も正しく為されなければならない」

ことに根差す。

それゆえ、

命題C2*のような順序によってしか、矛と盾の議論はできず、

同時に、そのような物体は論理の構造上、存在できない。

ここで、

E:「全能のパラドクス」

(E※:神は自身を全能ではない者にできるか。出来ても出来ずとも、全能性は否定される)

というものがある。

しかし、

これは誤りである。

この考えは、

F:「神は“全知”であり、全能である」

ことを忘れているのである。

神が全知であることを認めなければ、命題Eのような話題をする必要はなく、

G:「神は悪を為すことができない」

という主張で事足りる。

F*:「神は、“全知であり、全能であり、最高善である”」

という大前提は、少なくとも抑えなければ、議論の土俵に立てない。

つまるところ、命題Eが誤りなのは、

命題D*に対して命題Fが対応することで説明できる。

ようするに、

D**:「“絶対的なもの”は唯一で、最善性を有しており、善は知によって為される」

ということである。

これは、命題F*の構造を説明したものであり、

F**:「“絶対性”はその定義上、“唯一、最善のもの”であり、それは知を伴う」

ということである。

H:「知力は、常に能力に先行する」

ことは自明で、

H*:「能力は、知力に支えなければ機能し得ない」

であろう。

すべてを司る神については、

I:「全能であることは、全知に支えられている」

のであり、

I2:「神は、最も義しい判断を為すために、自身が全能で在り続ける必要を知っている」

のであって、

I2*:「神は全能だからこそ(必ず全知が先行し)、自身の全能性を消すことはしない」

ということである。

しかるに、命題Aについては、

A2:「矛盾の解決は、神が“唯一の絶対”者であることを認めることで成される」

と言えよう。

ゆえに

∴「絶対とは唯一であり、すべてを知る神である」

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