「私は窓から樹を眺めていた」
幼い頃からずっと背をもたれていた、
もう手の届かない樹を。
あの青い果実を口にして、
今一度、私に命が与えられたなら…
いや、もう選べないのだ
いかに戦えど、病には抗えぬ。
いやはや、
こればかりはなんとも「読めなかった」わ
生きるか、滅びるか、
大王と呼ばれ幾万を与えてきた私が
この二つを“選べない”とは、、
「王様…」
「王…」
「王よ…」
「最も強い者が王位を継承せよ…」
あぁ…目がかすむ
‘‘寂しい顔をするな。笑って送ってやってくれ’’
なんだ。もう声も出ぬのか…。
「貴方はあらゆる物を“掴もう”としてきたのよ」
「ラケル…」
「熱もほどほどにしなさいな」
「わたしはどこへ行くんだ。君のところに行けるのか」
「貴方はあらゆる物を“奪って”きたのよ」
「ヘベ…」
「そろそろね」
「待ってくれ。行かないでくれ」
「貴方はあらゆる物を“貪って”きたのよ」
「誰なんだ…?」
「貴方、まだ気づかないの?そんなんだから、天のお父様が困るんじゃない」
「…!」
「掴めない“もの”の尊さを貴方は嫌というほど知ることになるわ」
…それが、あなたの務めだもの
*注1
ーこの物語は、日本という「伝道がうまくいっていない」国にあって、筆者が“切り札”として著すものである。はたらきを始めてからというもの、預言者エレミヤが同胞のことで涙を流したことが、よく解る私である。今もまだ私は“神による物語”を生きているだろう。その行く末はわからない。まして、全能者による統治という観点を持たなかったかつての私は、この半生で展開される神の摂理を悟る由もなかったー