Age32

始まりの樹

「私は窓から樹を眺めていた」

幼い頃からずっと背をもたれていた、

もう手の届かない樹を。

あの青い果実を口にして、

今一度、私に命が与えられたなら…

いや、もう選べないのだ

いかに戦えど、病には抗えぬ。

いやはや、

こればかりはなんとも「読めなかった」わ

生きるか、滅びるか、

大王と呼ばれ幾万を与えてきた私が

この二つを“選べない”とは、、

「王様…」

「王…」

「王よ…」

「最も強い者が王位を継承せよ…」

あぁ…目がかすむ

‘‘寂しい顔をするな。笑って送ってやってくれ’’

なんだ。もう声も出ぬのか…。

「貴方はあらゆる物を“掴もう”としてきたのよ」

「ラケル…」

「熱もほどほどにしなさいな」

「わたしはどこへ行くんだ。君のところに行けるのか」

「貴方はあらゆる物を“奪って”きたのよ」

「ヘベ…」

「そろそろね」

「待ってくれ。行かないでくれ」

「貴方はあらゆる物を“貪って”きたのよ」

「誰なんだ…?」

「貴方、まだ気づかないの?そんなんだから、天のお父様が困るんじゃない」

「…!」

「掴めない“もの”の尊さを貴方は嫌というほど知ることになるわ」

…それが、あなたの務めだもの

 

*注1

ーこの物語は、日本という「伝道がうまくいっていない」国にあって、筆者が“切り札”として著すものである。はたらきを始めてからというもの、預言者エレミヤが同胞のことで涙を流したことが、よく解る私である。今もまだ私は“神による物語”を生きているだろう。その行く末はわからない。まして、全能者による統治という観点を持たなかったかつての私は、この半生で展開される神の摂理を悟る由もなかったー

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